1994年、この頃はドルの偽札や偽造小切手が広くはびこっていました。
当時、私は現金を扱う仕事をしていて、ドルの偽札の見分け方は直ぐに憶えました。偽札がたくさんあるので、学習材料に事欠かなかったわけです。紙のざらざらとした質感のないもの、印刷が悪いものなどなど、指と目で見分けていました。疑わしい人から支払いをもらう時は、領収書の裏に一枚残らずお札の通し番号を書き留め、本人にも署名をしてもらい、もし銀行などで偽札と判断された場合には、返金ができるようにしていました。
銀行や両替商も、偽札には慣れていて、こちらが渡したお金に偽札が混ざっていても、咎めることなく、偽札ですよと、そのまま返してくれていました。現在では、両替商でも再使用できないようにパンチで穴を開けてから返却するとか、銀行では、偽札は取り上げて預金者にどこから受け取ったものかの質問をした上でアメリカ大使館に連絡をしたりと、偽札対策の体制が整ってきて、偽札がかなり減りました。
もっと厄介だったのが、偽小切手でした。支払いをドルの小切手で受けて、日本の銀行で入金確認がとれて、納品した後に不渡りになるというものです。当時は、今のようにネット・バンキングもなく、ウエスタン・ユニオンのような送金サービスもなく、海外に小切手を送って支払いを済ませるということが、多かったようです。
海外からウガンダに郵送されてきた小切手を郵便局で盗んで、全く関係のない第三者に支払うよう内容を書き換えるのですが、特殊な液体を使うのか、偽小切手は匂いが臭かったです。盗まれたことに気付いた発行者が、銀行に被害届を出して支払いを止めます。この時点で、入金になっていたものが遡って不渡りになるという仕組みです。
こんな感じで、偽札や偽小切手を使って輸入・仕入れをする人がたくさんいましたが、不思議と逮捕されることもなく、街中で普通に商売をしていました。ばれても、ちょっと気まずいかなって言う程度です。犯罪が横行していたわけです。
送金システムが発達して、国をまたいで小切手を使うこともなくなり、ドル紙幣も2000年以降のものは偽札が少なく、状況はかなり改善されました。しかし、こうして安心していると、今でも時々やられることがあります。