ほたる

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その日は早く家に帰りついたので、走る前に少し寝ることにした。しかし、予想以上に深い眠りになってしまって、起きたのはランニングを始める時間の30分過ぎだった。

もう今日走るのは止めようかなとも思ったが、コップ一杯のお水を飲んで家を出た。前回走った日から少し間が空いていたので、疲れがなくいつもより調子が良く走れた。

だんだんと日が暮れてきて、走り終わる頃には自動車の照らす灯りを頼りに走るくらいになっていた。普段着を着た人が後ろから走ってきて、私を抜く。次に警備会社の制服と革靴を履いた人が抜いていく。後者の方は、必死な走り方で、泥棒が逃げる時と言うか、追いかける時というか、ばたばたした走り方で長い距離には向いていなさそうだった。

自分のペースを変えたくなかったので、私はそのまま走り続けたが、彼らが疲れてきたら抜こうと思っていた。

革靴は予想通りで、何もないところで転倒して、立ち上がった後も走らなかった。革靴はそこで抜いた。よく見ると、普段着も直ぐそこのところにいた。こいつを抜こう。こいつの発言が気に食わなかった。私を抜く時に、”Well done”と私に言ったのだ。”Well done”とか”Be patient”とかは、言うのも言われるのも私の大嫌いな言葉だ。前者は焼肉を頼むときに言えば良いし、後者はなぜ私が病人にならないといけないのか訳が分からなくなる。

普段着を抜いてちょっと行った所で、私のランニングは終わった。空にはっきりと星が見えるほど暗くなっていた。そこから家まで少し草むらの中を歩くのだが、いちぶ暗闇になっているところがあるので、嫌だなと思いながら歩いて帰った。急に暗闇に入ると地面が見えなくなるので、ちょっとだけ目をつぶって暗さに目を慣らしてから暗闇に入った。

そこには、たくさんの蛍がいた。止まっているものも、飛行中のものもいる。久し振りに蛍を見たような気がする。以前は家の前の道にもいたのだが、最近はお隣さんがきれいに草刈りをするので、もう何年も見ていなかったように思う。ここにいたんだ、と嬉しくなった。コオロギの鳴き声も聞こえてくる。

ウガンダの蛍は小さくてあまり明るくない。一度捕まえて家に持って帰ったが、直ぐに死んでしまったので、二度と捕まえないようにしている。今年の雨季は雨量が多いので、彼らの繁殖には都合が良いのだろうか。身近に蛍とかコオロギとか昆虫がいるというのは、幸せなことだと思った。

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