南スーダン出張最終日、ジュバ空港に向かう。またもや、おおよそ空港とは思えないような空港にやってきた。
建物の入り口で、荷物の検査を受けて中に入る。カバンをX線の機械に通すだけで、身体検査はない。チェックインをするのは、いまだに普通の勉強机で、到底空港のチェックイン・カウンターとは思えない出来だが、そこにいる職員からも同様の印象を受ける。ここのスタッフが、航空券にチケット番号が記載されていないと搭乗を拒否する話は聞いていた。チケット番号の記載されないチケットなぞ存在しないのに。でも、本人を目の当たりにして、その本質を理解できた気がする。悪意はないのだろうことも理解できた。
私の持つスーツケースは、機内持ち込みのサイズよりも少し大き目で、当然毎回預け荷物としてお願いしている。しかし、このチェックイン担当の職員は、しきりに機内に持ち込むことを勧める。若い頃であれば、行った先の空港で鞄の受け取りを待たずに出国できると喜んだだろうが、流石に今は機内までこのスーツケースを持ち込むのが面倒なので、3-4回押し問答をして預け荷物にしてもらった。荷物のタグの名前は私が書いた。タグを書くのが面倒だったのだろうかと思う。
鞄を運ぶ担当の職員が、私のスーツケースを片手で持ち上げて言った。「このカバン、10キロ」。カウンターの職員はその重量を書類に書き込んでいる。往路でチェックインした時が11キロで、いくから配った書類分軽くなっていたので、10キロという数字は的を射た数字だ。しかし、彼の腕測量は1キロ刻みなのか、5キロ刻みなのか、どうなんだろうと思った。彼の体調とも関係するのだろうか。きっとそうだ。
カウンターの勉強机にハシビロコウの絵の描かれたステッカーが貼ってあったので、何の鳥なのかを聞いてみた。「この鳥は、ハシビロコウといって、エンテベ動物園にいる。君は知らなかったのか。」と腕測量の彼は答えた。和田にハシビロコウを語るとは10年早いと思ったが、とりあえずなぜハシビロコウが選ばれたのかを聞いてみた。答えはなかった。しかし、このウガンダ人と思われる腕測量、折角南スーダンに来ているのだから、エンテベの話ではなくて、南スーダンの話でもしてくれと思った。
イミグレでスタンプをもらって、空港ビルの外に出る。イミグレでスタンプをもらった後で、再度空港の外に出られるのはジュバ空港の特徴だ。駐車場の向こうのレストランでソーダを飲みながら、パソコンを打つ。時間になったので、空港ビルに向かい、カバンをX線の機械に通して中に入る。
飛行機は、15分ほど遅れて出発した。機内に入る際に、入国カードが配られた。私は通路側でC、窓際のAは小柄の初老の男性、間のBには大柄の女性が座った。私が入国カードを書き終わると、当然のように初老の男性は私のボールペンを借りた。その後、南スーダンの新聞を読み終わり、前席のポケットに差し込んで寝ると、通路向かいのD席の男性が私を起こし、新聞を貸してくれという。新聞を貸す。うっとうしいので、イヤホンを耳に挿してアレサ・フランクリンを聞く。幸い、ボールペンも新聞も着陸前に返してもらえた。
着陸用のタイヤが出される機械の音がして、エンテベ空港の滑走路に無事着陸した。とりあえず、帰ってきたと思った。