南スーダン 連行 その2

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関係者の車に乗せられ、署に向かう。警察でもなく、軍でもない、国家治安局みたいな機関で、大統領府直結で軍と警察の上の機関だと言っていた。既に日は暮れて、周りは真っ暗になっていたが、土曜の夜だからか車の交通量はまあまあある。私は関係者の運転する右ハンドルの車の助手席に乗り、私のカメラを持つヒタイギャーは後部座席に乗っている。

この関係者は頭に血が上っているようで、かなり荒い運転をしていた。思い切り他の車の前に割り込んでおきながら、その車の運転手に怒鳴り付け、次に前を走っていたバイクタクシーにホーンを鳴らし続けた。バイクタクシーの乗客もそうとう気が強いのか、後ろを振り返り何か必死に言い返している。関係者は更に頭に血が上ったのか、運転したままピストルを取り出して、バイクタクシーにそれを向けて何か喚いている。バイクタクシーの乗客もまだ言い返している。これだけの至近距離で且つ車内で撃たれると、かなり耳に来るし、薬きょうが助手席側に飛んできて嫌だと思ったが、結局発砲はなかった。

そうして、街から少し離れた治安局に着いた。明かりはついていなかったが、建物は大きくて立派で、駐車場はまばらに明かりがあった。到着すると運転手君が直ぐに数名に取り囲まれ、皆に責められていた。後で聞いた話だが、彼はかなり反抗的な態度をとっていたらしい。この子を違う場所に連れて行こうするので、拷問でもされるのではないかと心配になる。すると、私も同じ方向に行くよう言われ、それなら良いやというのと、えっ私もぉと、順番にそう思った。

行った先には、穏やかそうな年長者がいて、さっきまで頭に血が上っていた関係者が生真面目な感じで報告を始めた。私と運転手君は、地面にお尻を付いて体操座りのような姿勢でそれを見守る。小雨が降り始めたが、全員雨に打たれながらもずっと外で話が続く。関係者は私にカメラカバーはないのかと聞き、車内だと答えたら、雨に濡れないよう椅子の下にカメラを置いてくれた。

穏やかそうな年長者は、ぼそぼそと話す人で、私が日本人だと言ったら、日本はジュバで道を作っている良い人たちだと言った。カメラは返すが、パスポートは預かる、月曜日に取りに来るようにとのことだった。

それ以降の話は手短に書くが、月曜日に事務所の偉い人にちゃんと説明をしたら、現地手配会社の手続きに落ち度があったことが判明し、私が悪人ではないことも理解してもらえた。パスポートは返すが、一旦出国するようにとのことで、とりあえず一度仕切り直すことになったが、結果的に関係者とも友好関係も作れたし、正式な許可の情報が得られたのが収穫となった。

ツアーの下見はできなかったが、南スーダンのややこしさを少し習得できたように思う。ひとつ印象的だったのが、これだけ話がややこしくなったにも関わらず、誰からも一切賄賂を求められなかったことだ。あの場面で賄賂を要求してこないのは、アフリカではルワンダと南スーダンくらいではないだろうか。南スーダンはいろんな顔を持ち合わせた国のようだ。まだ下見が終わっていないので、また行く準備をしなければならない。

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