改装が終わったばかりの真新しいキガリの空港で、かばんを検査の機械に通す。自分自身の身体検査も終えて、機械から出てきたカバンを引き出す。チェックイン・カウンターに向かおうとしたところを空港の係員に止められた。カバンの中身を調べると言う。
カバンを台に載せて、鍵を開け、中身を二、三取り出してみる。何か金属のものがないか、聞かれたので、小型ナイフを見せる。係員は、それではなくて、何かアクセサリーみたいなものを見たと言う。彼女は確信があったのか、カバンから次々に物を取り出して調べるが、何も出てこない。というか、私はアクセサリーを持っていないので、出てくるわけがない。
カバンの中身の半分以上を取り出した状態で、再度カバンを検査の機械にかけた。今度は何も見えなかったようだ。検査が終わったと言われ、荷物を詰め直す。係員の勘違いだったのだろう。本人の態度から悪意がなかったことは理解できたし、終始丁寧な物言いだったので、気を悪くすることもなかった。ルワンダは、アフリカで最も賄賂が少ない国なので、初めから安心感もある。ただ、仮に私がアクセサリーを持っていても、特に調べる必要はあったのだろうかと、少し気になった。
チェックイン・カウンターで、カバンを預け、搭乗券を受け取る。隣のカウンターで、初めて飛行機に乗るからと、窓際の席を頼む初老の男性に慎ましさを感じつつ、イミグレに向い、改装したばかりのきれいな空港の中を移動する。
エスカレーターもセンサー式になっていて、動いていないのを不審に思ったのか階段を選んだ男性を横目に、センサーを感知させてエスカレーターを稼働させ、さっそうと次の階に向かう。一つ目のエスカレーターが終わり、二つ目のエスカレーターに乗る。センサーを感知させるべく、前に進む。だが、今回はエスカレーターが動かない。センサーが故障しているのか、エスカレーター自体が故障しているのか、私には分からないまま、さっき階段を選んだ男性に追いつかれそうになったので、そのままエスカレーターを階段のように登ることにした。いつも思うが、エスカレーターは登りにくい。
で、上階のイミグレのカウンターに着いた。カウンターは二つで、私は左側に並んだ。右側のカウンターの男性の係員は、ちょっとした言語マニアなのか、見たからにコンゴ人の男性には、「スペイン語を話すか」とスペイン語で話しかけ、ウガンダ国籍の男性にはガンダ語で話しかけていた。そして、私には、左のカウンターにいるにもかかわらず、「こんにちは」と日本語で話しかけてきた。「こんばんは」と訂正してあげた。なにか、小難しいことを日本語で聞いてあげようかと思ったが、出国できなくなると困ると思ったので止めた。
免税店の周辺も改装が終わっていて、空港全体の改装が終わっただろうことが分かった。小さい空港で、さほど活気はないが、きれいで快適な空港になった。94年に初めて訪れた時、斜めに倒れた柱の後ろにいるイミグレ職員とやり取りしたのを思い出す。キガリ空港は、この近辺のハブ空港として機能しつつあり、最近はトランジットのお客さんも多い。しかも、インターネットも無料で使えて、意識の高さを感じる。
出発時刻が30分遅れたことは、最後まで通知がないままの搭乗だったが、無事出国した。