裁判終り その二

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少しして、裁判所に戻り裁判が再開した。裁判所所属の警察官の指示に従い、告訴席というか、原告用の囲いに入ったのだが、本当は私はそこにいる必要はなかったようで、直ぐに裁判官から傍聴席に戻るよう伝えられ、傍聴席に戻った。裁判所から失笑が漏れなかったのが少なくとも救いだった。

 

裁判官と被告とのやり取りがあり、検察からの説明が入り、裁判官から意見を求められた。傍聴席で立ち上がり、立った状態でさっき検察に伝えたのと同じ内容を伝えた。裁判官から被告に無免許運転、無保険運転など3-4点の刑が下され、罰金の金額も伝えられた。

 

2021年2月に起きた交通事故の処理がやっと終り、本当にほっとした。胸をなでおろしながら裁判所から退廷しようとすると、数名が私のことを追ってきた。被告の家族だった。顔ぶれは奥さん、お兄ちゃん、お父さんといった感じで、私が修理代を免除したことへのお礼を言いたかったようだ。

 

お互いが納得できる形で裁判が終わって、本当に良かったと思った。被告本人は事故して、直ぐに入院生活が始まり、その後の拘留期間も長かったと聞いていたので、出てこれるようになって私も嬉しい。本人が経済的に苦しいことは想像できていたので、なにか困ったことが連絡してくるようお兄ちゃんに電話番号を伝えた。半分は社交辞令だが、半分は本気である。

 

裁判所の敷地の門を出るあたりで、お兄ちゃんらしき人物が一緒に来てくれていた私の社員に話しかけた。私の社員が言うには、罰金を払うお金がないので、お金を貸して欲しいとのことだったらしい。いくらなんでもそれはないだろうと思い、噴出しそうになる。

 

罰金は家族でどうにか払って欲しい、どうしてもお金が集まらなかったら、また連絡してきてくれるよう伝えて裁判所をあとにした。加害者の罰金を被害者に払うようお願いする心意気というか、弟思いのお兄ちゃんの優しさには頭が下がるというか、アフリカ的な見事な駄目もと精神に段差もないのにこけそうだった。

 

(終り)

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