10年振りのタンザニア行きで、一人だけ10年振りに会いたい人がいた。当時、彼は私のお客さんで、日本からの中古車を扱っていたのだが、その後不動産業も始めてダル・エス・サラームにたくさんのビルを持っていると聞いていた。
用事もないのに、忙しい人に会いに行くのもどうかしらと少し迷ったが、メールを送ったら直ぐに返事をくれたので、会いに行くことにした。10年前、既に自動車の商売で大成功していた彼が、不動産業を始めて、どれくらい変わったのだろうかと楽しみだった。
アポは取れたものの、場所を確認しないまま、昔からある自動車のヤードに行ってみたら、同じ事務所の同じ場所に彼がいた。思った通りだった。40本も50本もビルを持っているのだから、20階建てのビルの最上階に大きな事務所を作ることだって出来るのに。
10年経って少し年月の経過を感じたが、以前より元気そうな彼を見て、少し嬉しかった。以前と同じで普通のチェックのシャツを着ていて、態度も以前通り気さくで、以前にも飲んだことのあるマサラティーを出してくれた。
10年前、この人にどうやって車を売り込もうかと、必死になって交渉をしたのを思い出した。ものすごく回転の速い人なので、こちらが少しでももたもたすると、いらいらさせて追い返されそうな気がするので、彼に会う前には、交渉内容のシュミレーションをして、即座に返事ができるよう、いくつも答えの例を準備してから交渉の臨むようにしていた。私の20代前半の頃の話だ。
今回は、商売の話はないので何の準備もせずに来たが、その分話すこともなく、少し気後れしてしまった。出されたお茶をさっさと飲んで帰ろうとするが、ゆっくりしていけという。間が持たないなと思っていたら、今5本ビルを建てているんだと設計図を見せてくれて、私が今旅行業をしていることを話すと、彼の友人で旅行業に成功している人の話をしてくれた。
車も1台も持っていない人がいて、付けで車を売っていたが、その人は今サファリカーを400台も所有するタンザニアで一番の旅行会社になっているとのこと。あんなに効率良く仕事が出来て、あれだけ一生懸命働く人を私は見たことがない、日曜の深夜まで働く人だと彼は言った。他者から本当は200台くらいと聞いたが、その人がタンザニアで一番であるのは本当のようだ。
そのような友人を持つ彼だが、彼は元々自動車の整備士で、修理の傍ら自動車の販売を始めたらしい。私の出会った90年代半ばには飛ぶ鳥を落とす勢いで、中古車、新車を問わず販売していて、東アフリカで断トツの一番だった。現在の主な収入源は不動産で、自動車はごく少量やっているだけだと言っていた。
タンザニアでは名の知れた大金持ちになった彼に会って、改めて私みたいな甘ちゃんは逆立ちをしても、ああなれないなと大きく気を落とした。また同時に、少しは見習って頑張ってみようかなと思った。