その時は、エチオピアに10日間ほど滞在だったが、マラソン大会の前で体力を落としたくなかったので、ランニングの服と靴を持って来ていた。
ある日の朝、時間に余裕があったので、ぱらぱらと小雨が降るなかランニングに出た。片道2キロ往復4キロくらいのコースで、行きは緩やかな登りが続く。この日は、宗教儀式のある祝日だったので、朝から街はがらんとしていた。
通常、標高1,200mのカンパラに住む私だが、標高2,400mでのランニングは、体感できるとほど体への負担が大きく、いつもよりもかなりたくさんの息を吸いながら走った。帰りは、少し体が慣れたのか、下りになって負担が減ったのか、少し楽に感じる。
いつも車で通る道を、自分の足で走るといろいろな発見がある。ゆっくりなので、お店屋さん、洗車場、服屋さんと街並みも時間をかけて覚えられる。一人、いい年のおっちゃんが、アムハラ語で「頑張れ、頑張れ」みたいな掛け声をかけてくれた。おっちゃんにしては、とても控えめで可愛らしい言い方だった。
走っていて、どのお肉屋さんにも行列ができているのに気付いた。アフリカでは珍しいことだが、エチオピア人は待つ時に自発的にきれいに列を作る。この祝日には、生肉のひき肉を食べる風習があるらしく、それで行列ができるのだと、後で知った。
こんな祝日でも、朝から町を掃除するおばちゃんが数名いて、麦わら帽子を被って、柄のついた箒で道路の脇を掃いている。私を見て、おばちゃんたちが高い声で話し始めた。現地語なので、何を言っているのかは分からないが、私の理解・想像では「わー、中国人の人が走ってはるわー。アディス・アベバでも中国人の人が走りはんねんなー。キャー。」だった。そして、私に向かって、また高い声で「中国の人、キャー。」と言って、他のおばちゃんと楽しそうに笑った。
私は、普段から自分の理解できない現地語を頻繁に聞く環境にいて、話し方や素振りで相手の話していることは多少分かるつもりだが、あのおばちゃんの天然の話し方は、絶対に敬語的表現で悪口は言っていなかった。
その後も、何人かに何を言っているか分からないが、何か気持ちの良い声を掛けられながら、ホテルまで帰り着いた。出発する時には、不思議そうに私を見ていた警備員が、笑顔で手を叩きながら、現地語で何か話しかけて迎えてくれた。あれは、「お疲れ様でした。」に間違いない。完走後のこんな歓迎は、カンパラ・マラソンでのフルマラソン完走後でもしてもらったことがない。ホテルの建物に入る前に、もう一人の警備員も、拍手をもって私に「お疲れ様でした。」を言ってくれて、涙が出そうだった。
ちょうど、エレベーターに乗る時に、その時の仕事仲間がいたので、ランニングに行ってきたことを伝えたが、こちらの反応は結構あっさりだった。
しかし、この差は何なんだと思った。我がウガンダでは、ランニングに出ると、明らかに相手を馬鹿にした言い方で、「チャイナ、チャイナ」と冷やかし、フルマラソンを完走しても何も言わないのに対し、ちょっと4キロ走っただけなのに、こんな応援と歓迎をしてくれるエチオピア人の差。ウガンダなんて、大嫌いだと思った。
最初の印象がとても良かったので、エチオピアでは毎回ランニングをしようと思ったのだが、仕事の関係でまだ2回目が走れていない。