最近は採血の結果もだいぶ良くなり、結核菌も減っているようで、病棟内のみの外出許可が出た。やっと、自分だけの病室からでられるわけだ。昨日、看護婦さんに病棟内を案内され、庭にでた。この庭で散歩しても良いとのこと。
1ヶ月ぶりに外に出たときは、嬉しさと同時に不安を感じた。たった1ヶ月で病室生活に適応してしまったのか、外に出るのに少し抵抗を感じた。病室という屋内に短期的に体験する架空の空間があり、それに対して外は社会を意味し、しかしまだ社会にでる心構えができていないように感じたのだろう。電話でも同じで、この架空の空間に本物の社会からの電話がかかってきて、違和感を感じたことがあった。
そして今日、一人で庭に散歩に行ってきた。不安など一切必要なかった。外は気持ち良かった。久しぶりに靴を履いて、地面の上を歩いた。12月とはいえ、日中の外は温かく、鳥も飛んでいた。救急車で運ばれて、裏口からこの病院に入ったので、どんな建物の病院かも全然知らなかったのだが、その外観の半分くらい見ることができた。銀杏の葉が地面に落ちているのだが、銀杏の木が見当たらない。よく見たら、目の前にある葉が一切ないその木だった。
フェンスの外に、パキスタン人と思われる親子が現れた。お父さんと娘二人。年は2歳と5歳くらいだろうか。お母さんがこの病棟に入院しているようで、窓越しに言葉を交わした後で、芝生の上にござを広げて休んでいた。きっと面会はできるのだろうが、それでも子供への感染を恐れてこうしているのだろう。どれくらい日本に住んでいるかは分からないが、外国で小さな子供二人の面倒を見ているお父さんは大変だろう。それにまして、そんな小さな子供から隔離されてしまったお母さんはどんなに寂しいことだろう。
刺激のない生活をしているせいか、ちょっとしたことにも感傷的になってしまう。