同性愛に関する対立について2

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前回、反同性愛をめぐる潜在的な生物学的な側面を書いたが、今回は政治的な側面について書く。

「民主党」対「共和党」の代理戦争
ここでは、同性愛問題をアメリカ国内問題の延長上に考えてみる。今年2月末にアリゾナの知事が、州議会で可決されていた同性愛者に商業サービスを拒否する法案への署名を拒否した。ただ、州議会で可決を受けたということは、州民の民意としては基本的に反対だったことを意味する。

今回のウガンダの反同性愛法案の原案を書いたのは、アメリカの福音派であることは周知の事実だが、この福音派は共和党の主要支援団体だ。野党が海外で政治的活動をして、それに成功して、与党がそれを面白く思わないのは当たり前のことだ。

要するに、同性愛問題はアメリカ国内で未解決の問題で、場合によっては反同性愛の流れに押し戻される可能性もあり、それを恐れる民主党は海外で野党がその流れを作ったことをどうしても認める訳にはいかなかった。

アフリカ大陸での戦争の多くは、資源の奪い合いの代理戦争であることが殆どだが、今回のこの反同性愛法案をめぐる争いも、舞台をアフリカに、アメリカの国内問題の対決が繰り広げられたという一面を持ち合わせている。

「植民者」対「被植民者」
被植民者であったアフリカの国々に法律をもたらしたのは、植民者である。独立から50年が過ぎて、植民者から強制された法律を、被植民者であった当事者が自らの手で書き換えつつある。

その植民者たちは、法を与え独立を認めた後もアフリカの国々での影響力・支配力を維持しようとしてきた。支配の道具に援助が利用されているのは周知の事実で、新植民地主義という言葉も頻繁に使われるようになってきた。独立後の支配に援助が利用されているのは、植民地化前に宗教が利用されたのに似ている。

80年代までは東西冷戦が背景にあったため、その故の揉め事もあったが、どちらかの独占状態になることはなかった。しかし、ソビエト崩壊後は、西側諸国の独占状態となり、彼らのアフリカでの影響力は確実に増した。

そして、現在この西側諸国の独占状態を脅かしているのが、中国だ。中国もアフリカの資源を狙っている点においては、新植民地主義といえる。ただ、欧米との大きな違いは、支援をしてもその条件としての内政干渉をしないことだ。西洋的人権、民主主義など欧米が良しとする思想や制度がアフリカに持ち込まれた結果の負の面、元来の文化の否定や元来の制度の崩壊のもたらす影響が決して小さくなかったことを考えると、内政干渉をされないというは、当たり前のことでありながら、真の意味で植民地ではなく独立国として認めてもらい、そう扱われてもらえたという、大きな喜びをアフリカに与えたことは間違いない。

今回の反同性愛法案で、ムセベニ大統領が最も問題視していたのは、白人によるウガンダ人の同性愛への勧誘だった。その国の法で禁じられ、文化的にも忌み嫌われる行為を、なぜ彼らは行ったのか。そこに、地元の人たちや文化を尊重する思いはあっただろうか。正しいのは自分たちで、間違っているのはアフリカ人だと思っていたのではないだろうか。

今まで言いなりになってきた旧被植民者が旧植民者に、ようやく一言物を申したのが今回の法案の成立と私は理解している。その背後には、国内で地下資源が確保できたこと、欧米依存体質の低下などがある。今回の法案成立は、他のアフリカの国でもおおむね好評のようだ。

取り敢えず、一旦お終い。

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