カンパラに民族舞踊を専門とするダンスグループがあって、その団体は国外での公演も行うなど活躍していて知名度も高い。その団長はお喋り好きで、一度マイクを持つとなかなかそれを放してくれず、話はほどほどにして早く踊りを見せて欲しいと思ってしまうのだが、彼がとても興味深い話をしていたので、それを例に書いてみる。
とある国際機関の代表がウガンダに視察に来た、代表は視察で漁港を訪れ、周辺で地面の上に昼寝をしていたあまり身なりのよくない漁師に話しかけた、もっと働いてもっと稼ぐよう代表は漁師に伝えた、漁師はなぜそう言うのかを代表に尋ねた、代表はお金を稼ぐとプール付きの家に住むことができると答えた、漁師はなぜプール付きの家が要るのかと代表に尋ねた、代表はそこでリラックスすることができるなどの利点を伝えた、漁師はその代表にプール付きの家は必要はないと答えた、なぜなら私は今ここで十分リラックスしているからだと、団長が話したところで、会場では一斉に笑いが起きた。
アフリカを旅したことのある人は、皆知っていると思うが、都市の一部を除いては、多くのアフリカ人は穏やかで、大らかだ。見知らぬ旅行者にも笑顔で接してくれることが多い。特に農村部においてその傾向が強い。自分も間違うことがあるので、他人の間違いにも大らかで、多少のことは許し合うというのが彼らの文化だ。内々にお仕置きをすることがあっても、公に罰するということを彼らはあまり好まない。私はそれはアフリカの一つの魅力であって、これからも彼らにはその魅力を失ってもらいたくないと思っている。
彼らは厳しさのない穏やかな社会に住んでいて、社会を発展させることよりも、自分たちの属する社会の調和や各自の尊重をより大切にする。利権を巡って争う一部の人たちを除いては、発展の過程で生じるかもしれない軋轢を好まず、自分たちの社会の調和が崩れたり、個人が穏やかでいられなくなったりすることを希望しない。自らの文化が守られるならばという条件の下でゆっくりとした発展を選択しているように見える。
なので、おそらくこの社会は先進国が望むような速度で発展を築くことに不向きで、前に進んだり後ろに下がったりしながら、のらりくらりとゆっくりと社会の発展を進めて行くのだろう。農村は食べ物が豊富という強みもあり、都市と比較して発展に依存しなくてもいいという背景もある。
都市部の頑張らないという選択に加え、農村部では社会の発展よりも社会の調和を優先させ、また個人が穏やかにいられることを優先させているというのが、「なぜアフリカは発展しないのか」という問いの答えだと思う。