アフリカに長く住んでいて、時々日本から来た日本人を現地で案内することもあるが、食事に関して不思議に思うことがある。なぜか日本人は海外で日本食を食べたがらない。
「せっかくなので」という理由なら、日本人は食に対する好奇心が高いのだろうということを察することができるが、「まだ日本食はいいです。」、「もう日本食食べたいの。」など、「まだ」とか「もう」という言葉を聞くと、日本食を我慢することが美徳だと思っているのか、海外で日本食を食べることを恥だと思っているのだろうかと考えてしまう。
日本に来た外国人が日本人に宗教を尋ねたところ、皆無宗教だと答えるのに、自宅に行ってみると仏壇なり神棚があって、日本では信仰について話すのはタブーなのかと思ったという話を聞いたことがあるが、海外で日本食を食べたいというのは、日本人にとっての一つのダブーになっているかのようだ。
海外での日本食はおいしくないという先入観があって、おいしくない日本食を食べたくないという気持ちは分かるが、おいしい日本食レストランがあって、そこはとてもおいしいですよと、日本から来た日本人をそこへ案内しても、例によって「日本食はちょっと」と選んでもらえないことが多い。洋食レストランでもアジア系のレストランでもとびきりおいしいところは少なく、日本食以外ではさほどおいしくないものでも食べるのに、それでも日本食を頑なに避ける。
私の若い頃、1990年代はバックパッカーと呼ばれる、低予算でアフリカに長期間滞在することを目的にした、やせ我慢のような人たちがいたが、やせ我慢という意味ではややそれに似ていて、あと、ちょっと前になるが、日本の芸能人がしょうもないことをやってみせた後で「ワイルドだろう。」というネタがあったが、海外で日本食を食べない日本人はある一定の期間、日本食を食べなかった後で「ワイルドだろう。」と言うのだろうか。
そんな冗談はさておき、西洋人はアフリカでも西洋料理を食べるし、中国人は中華を食べているが、なぜか意識的に日本食を避ける日本人は不思議だなと思う。