
以前から気になっていたことなのだが、アメリカを旅するアジア人女性が中国語で挨拶をされて、私は中国人ではないと憤慨する動画を見て、現地語を使う時に配慮すべき点について書いてみることにした。
ケニアやタンザニアでのスワヒリ語やルワンダでのルワンダ語に当たるような、全ての国民が話す共通の現地語はウガンダに存在しない。国語は第一が英語で、第二がスワヒリ語だが、スワヒリ語が第二国語になって日が浅く、日常生活においてスワヒリ語が使われることはほとんどない。
首都カンパラで一般的に使われる現地語はガンダ語だ。ガンダ語はウガンダに数多くある民族の一つであるガンダ民族(なりガンダ人)の言語で、カンパラはもともとガンダ民族が住んでいる地域なので、そうなっている。生活のために使っているだけで、他民族の人たちがその言語を快く話しているかどうかは別問題だ。
日本人を含む外国人には、現地の方には現地語で話しかけることが良いことだと考える人がいて、その考え方は間違っていないが、冒頭で書いた中国語で話しかけられて憤慨したアジア人と同様に、その言語が自国語ならぬ自民族語ではなかったために、意図せずに相手を怒らせたり、不快な気持ちにさせていることがある。なので、話しかける相手の民族が分からない場合は、相手に不快な思いをさせることを回避するために、先ずは英語で話しかける方が無難だ。
アフリカの多くの国では、小学校から英語で教育が行なわれているため、簡単なことなら殆どの人が英語で話せる。その中で、相手に現地語で話しかけるということは、相手を貧しく教育を受けられなかった英語を話さない無教養な人だとして扱っているような意味合いにもなりうるので、相手の自尊心を傷付けることもある。事前に相手の教育レベルが高いことが分かっていたとしたら、その人には間違いなく英語で話しかけるべきだ。
例えばだが、第一言語が英語である外国人が、英語を話す日本人に日本語で話しかけたところで、さほど喜ばれるだろうか。相手の日本語力が自身の英語力を上回るのであれば助かることもあるだろうが、簡単な日本語しか話せず、複雑な話になったら英語に切り替わるのであれば、面倒なだけなので、最初から英語で話してくれと思うのではないか。
加えて言うと、スワヒリ語を理解できても、スワヒリ語を話したがらないウガンダ人も多い。それは、スワヒリ語がウガンダの混乱期に使われたという歴史的な背景があり、スワヒリ語にあまり良い印象を持っていない人がいるためだ。且つ、そもそもスワヒリ語を話す人はウガンダに少ない。なので、ケニア人やタンザニア人がウガンダに来て、当然のようにウガンダ人にスワヒリ語で話しかけるのを見ると、好まぬ言語での会話を強いられているウガンダ人が気の毒になってしまう。ガンダ民族以外のウガンダ人に、ガンダ語で話しかけるのも同じことになる。
アフリカでの民族対立、民族を単位とする内戦などは聞いたことがある人も多いかと思うが、アフリカで特定の民族語で話すのは政治的な文化的な背景を背負う意味合いになることもある。相手が喜ぶだろうという勝手な憶測で、ある特定の言語で話しかけて、相手に嫌な思いをさせないよう配慮が必要だ。
* 因みに、それは中国人に失礼になると思うので、私は中国人と呼ばれたり中国語で挨拶をされても怒らないようにしている。